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公務員がアフィリエイトやYouTuberなどの副業禁止の理由

 結論から言うと、公務員がこれらの副業をやると懲戒処分されます
 その理由について、根拠を出して説明します。

 今の時代、公務員も給料が上がりません。
 むしろコロナの影響でしばらくは下がるでしょう。

 しかし、政府はインフレを推し進めているので物価は上がっていき、家計は苦しくなっていくばかりです。

 何となく将来に不安を感じ、初期費用もあまりかからず手軽に出来そうなブロガー(アフィリエイター)やYouTuberをやってみようと考えた事がある公務員もそれなりにいると思います。

 しかし、先述の通りバレたら懲戒処分されます。
 地方公務員と国家公務員で若干異なるため分けて説明します。

なぜ地方公務員は副業が出来ないのか?

 こちらはシンプルなのですが、まずは地方公務員法をご覧下さい。

(営利企業への従事等の制限)
第三十八条 職員は、任命権者の許可を受けなければ、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(以下「営利企業」という。)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員その他人事委員会規則(人事委員会を置かない地方公共団体においては、地方公共団体の規則)で定める地位を兼ね、若しくは自ら営利企業を営み、又は報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならない

地方公務員法

 1番大事な所は最後の「報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならない。」という部分です。
 つまり「どんな事であろうと労働に対して対価を貰う事は禁止されている」という事です。
 「ブログ書いたり、動画撮影や編集は労働じゃないだろ!」と思われる方は、次項で労働の基準を説明しますので是非お読み下さい。

 現職中に趣味でブログを書いたりYouTubeチャンネルを開設したりしても、広告さえ貼らなければ問題ありませんが、これにも後述する注意点があります。

なぜ国家公務員は副業が出来ないのか?

(私企業からの隔離)
第百三条 職員は、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(以下営利企業という。)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね又は自ら営利企業を営んではならない

国家公務員法

 アフィリエイト報酬や広告収入などは個人に対して支払われるお金です。
 しかし「個人が収入を得ている=営利企業を営んでいる」とはならないでしょう。

 ここで、税理士も絶対習う最高裁で定められた事業所得の定義について過去の判例を紹介します。

 長くて読む気しない方はリンクと引用を飛ばしてください。

さっと読める! 実務必須の[重要税務判例] 【第42回】「弁護士顧問料事件」~最判昭和56年4月24日(民集35巻3号672頁)~ – 税務・会計のWeb情報誌『プロフェッションジャーナル(Profession Journal)』|[PROnet|プロネット]

事業所得とは、自己の計算と危険において独立して営まれ営利性、有償性を有し、かつ反覆継続して遂行する意思社会的地位とが客観的に認められる業務から生ずる所得をいうこと、給与所得とは、雇用契約等に基づき、使用者の指揮命令に服して提供した労務の対価として使用者から受ける給付をいうが、とりわけ、給与支給者との関係において何らかの空間的、時間的な拘束を受け、継続的ないし断続的に労務又は役務の提供があり、その対価として支給されるものであるかどうかか重視されるべきことを指摘した。

Profession Journalより引用

 判例の要点を抜き出すと、事業所得とは

①自身の計算と危険において営まれているもの
②営利性と有償性を有しているもの
③反復継続して遂行されているもの
④社会通念上、事業として扱われているもの

 となりますが更にかみ砕くと

①リスクを背負ってやっているか?
②リスクに見合う収益が見込めるか?
③継続しているか?
④一般的に事業と思われているか?

 となり、これらの要項を満たすと事業と見なされます。

 無料ブログ以外は①~③に該当するので、④がどう判断されるかによって変わりそうですが、アフィリエイト系の規約にこう書いてあります。

AdSense に登録することにより、お客様は、(場合によって)(i)広告その他のコンテンツ(「広告」)、(ii)Google 検索ボックスおよび検索結果、ならびに(iii)関連検索クエリおよびその他のリンクをお客様のウェブサイト、モバイルアプリケーション、メディアプレーヤー、モバイルコンテンツ、および/または Google が承認するその他の広告媒体(それぞれを個別に「広告媒体 [B&M1]」といいます)に配信することを Google に対して許可したことになります

AdSense オンライン利用規約

つまり、広告収入とはブログや動画という個人が所有するメディアの広告欄にお金を取って広告を出すようなものなので、事業として成立します。

 また、利益を得た場合にこのような物を経費計上すると思います。

ブログ:レンタルサーバー、有料テーマ&プラグイン、コンサルなどに使ったお金
YouTuber:撮影機材や編集ソフト、サムネ外注、動画のネタに使ったお金

 一般的に、経費とは「利益を得るために使用したお金」の事なので、営利目的で何かをしているのを自分から暴露しているに等しいです。

 もしバレたとしたら白か黒を判断するのは上司であり、場合によっては上司の上司であり、更にその…と何人も判断する人がいます。
 その中に一人でも「これは処分に該当する」と判断した人がいれば、バレた人は処分されるでしょう。

 2020/11/26 追記
 現役自衛官You Tuberが懲戒処分された前例が出来てしまいました。
 これで公務員がYou Tubeにチャンネルを持ち収益化をすると懲戒処分される前例が出来てしまったので、これ以降は見つかり次第処分されます。

Yahoo!ニュース
Yahoo!ニュースは、新聞・通信社が配信するニュースのほか、映像、雑誌や個人の書き手が執筆する記事など多種多様なニュースを掲載しています。

YouTubeで広告収入 陸上自衛隊の隊員、兼業で懲戒処分

11/18(水) 6:46配信
 【宮古島】陸上自衛隊宮古島駐屯地は17日、2017年6月から19年3月にかけて、動画投稿サイト「ユーチューブ」にゲームの攻略動画を投稿し、約108万円の広告収入を得たとして、宮古警備隊の37歳男性3等陸曹を16日付で停職4日の懲戒処分にした。

 同駐屯地によると、広告収入を得ることは兼業に当たり、自衛隊法で定める職務上の義務違反に該当するとして処分した。

沖縄タイムス
石川)町職員ユーチューブで収益 宝達志水町が注意:朝日新聞デジタル
宝達志水町の男性職員(30)が動画投稿サイト「ユーチューブ」に動画を投稿して収益を得ていたとして、町から口頭で注意を受けていたことがわかった。 町によると、大学生だった2011年ごろから車の魅力を紹…

 今回は特に裁判沙汰にはならなかったようですが、処分を不服として争い最高裁で勝つ事が出来れば、公務員も問題なくこれらの活動が出来ます。
 しかし、莫大な費用と時間がかかる事や職場の人間関係の悪化など、処分の重さと釣り合わなくなるのでおとなしく処分されると思います。

趣味の範囲なら問題ない?

 広告を貼らず、趣味の範囲内でブログやYouTubeチャンネルを運営していく事は憲法で表現の自由が定められているので問題ありません。

第二十一条
集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

憲法

 しかし、気をつけなければならない条項が国家公務員法や地方公務員法で定められています。(下記はかなり噛み砕いています)

(信用失墜行為の禁止)公務員として相応しくない行いの禁止
(秘密を守る義務)職務上知った秘密は墓まで持っていく事。
(職務に専念する義務)仕事中にネタ考えたり原稿書いたり禁止。
(政治的行為の制限)政治に関するあらゆる事を禁止。

 この4種類に引っ掛からなければ特に問題は有りません。

 炎上商法や中傷などでビューや再生数を稼ぐのはもってのほかで、制服を着たまま他人に読み上げられるブログや、制服を着たまま動画を撮影し投稿しても恥ずかしくない内容である必要があります。

 詳しくはこちらの記事に纏めてあるのでどうぞ

どうしてもアフィリエイターやYouTuberで食べていきたければ

 在職中にブログやYouTubeチャンネルを育てておき「ここまで育てば後は公務員を辞めても食べていける!」と確信した時点で退職し収益化しましょう。それ以外に道は有りません。

 しかし、ブログやYouTuberをやっている事が職場にバレたら、収益化していなくても良い顔はされませんし、上司に監視される覚悟は必要です。

まとめ

 「公務員 アフィリエイト」や「公務員 副業」などのキーワード検索をすると必ずと言って良いほど「現状はグレー」だの「バレないようにするには」といったブログやYouTuberがたくさん出てきます。
 「バレなければ良い」という観点ならどんな犯罪でもやって良い事になるので、当ブログでは「ダメな物はダメ」と言わせて頂きます。

 公務員になったのであれば、資金を貯め起業する準備をするとか、合法的にできる株やFXの勉強をする方が、よほど健全だし稼げる可能性があります。

 せっかく意識が高く「稼ごう」という気持ちが有るのなら、違法な事に手を出してリスクを負うより、正攻法で収入を得た方が建設的ではないでしょうか?

参照法規類リンク

国家公務員法 第九十九条(信用失墜行為の禁止)
       第百条  (秘密を守る義務)
       第百一条 (職務に専念する義務)
       第百二条 (政治的行為の制限)
       第百三条 (私企業からの隔離)

地方公務員法 第三十三条(信用失墜行為の禁止)
       第三十四条(秘密を守る義務)
       第三十五条(職務に専念する義務)
       第三十六条(政治的行為の制限)
       第三十八条(営利企業への従事等の制限)

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