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現役営内者用!タコ部屋にされそうな時に戦う根拠!

アイキャッチはこちらからお借りしました。

序文

 自衛隊は確かに階級がモノを言う世界です。
 どれだけ多くの隊員が、階級を笠に着た理不尽に枕を濡らしたかわかりません。

 我々は、日頃から自衛官の6大義務と言われてこれらを刷り込まれています。

指定場所に居住する義務
職務遂行の義務
上官の命令に服従する義務
品位を保つ義務
秘密を守る義務
職務に専念する義務

 「上官の命令に服従する義務」と言われて、何でもかんでも言う事を聞けと強要されがちです。

 しかし、よく思い出して欲しいのです。
 確かに「上官の命令に服従する義務」はありますが、それは自衛隊法57条の名前であって、守るべき中身は少し記述が違います。

(上官の命令に服従する義務)
第五十七条 隊員は、その職務の遂行に当つては、上官の職務上の命令に忠実に従わなければならない。

自衛隊法

 「職務上の命令」と明記されていますね。
 確かに自衛隊は、部隊の指揮官に判断の裁量を委ねている部分は大きいですが、命令の内容には根拠となる規則などが根差しています。

 つまり、階級よりも強いのは根拠です。
 どんなに偉い人が命令しようとも、発令者の裁量に任されている以外の事は、根拠や規則を基にしていなければ無効です。

法は自ら助くる者を助く
法律を知る者は法律から守られる

 という格言もあるように、法律や規則は弱い物を守るための物ではなく、法律や規則を知る者を守るために存在しています。

 前置きが長くなりましたが、この記事では最近急激に増えている新隊員によって営内が圧迫され、不当にタコ部屋に詰め込まれている隊員を救うために書いています。

 規則の後ろ盾があっても、先任の心象の悪化を恐れて言えない可能性が高いので、営内班長とかに頼んで言って貰うのも手だと思います。

自衛官候補生時代にも通じる規則

 自衛官候補生時代に言えるかどうかは置いておいて、残念ながら候補生はカードが1枚しかありません。

 もう一つの規則は陸曹、陸士を対象としているので、階級が付与されていない自衛官候補生には適用されないためです。

陸上自衛隊環境衛生規則

 陸上自衛隊環境衛生規則に戦う根拠が記されています。

(環境衛生監視指導)
第6条 環境衛生官は、各施設等における採光、照明、通風、換気、気温、気
湿、ほこり、ガス及び騒音並びにねずみ族、昆虫、病原菌及び有毒物による危
害並びに清掃、清潔、整頓及び汚物処理等について、少なくとも毎月1回以上
環境衛生監視指導の着眼事項(別紙第1)に基づいて環境衛生監視を実施し、
環境衛生点検表(別紙第2)を作成の上、駐屯地業務隊長に報告するものとす
る。
2 前項の場合には、環境衛生官は、施設の環境を調査するとともに、季節等
の条件を勘案の上、部隊等の健康管理係、環境整備、糧食等に関係のある幹部
及び当該駐屯地の所在する地域を管轄する保健所と緊密な連携をとり、有害な
事態が発生するおそれがあると認めたときは、直ちに応急の処置を施すととも
に、その改善について所要の資料を作成し、駐屯地業務隊長に、意見を具申す
るものとする。

陸上自衛隊環境衛生規則

別紙第1 項目2 隊舎 (6) 寝台の配列はよく、過剰な人員(参考:1人当たり生理的気積16㎡、床面積最低2.8㎡以上)が入っていないか。

陸上自衛隊環境衛生規則

 気積とは体積を表す言葉なので恐らく㎥の間違いだと思われます。

 これは「部屋全体の体積から、スタンドロッカーや机やベッド等が占めている体積を引いた後に、一人当たりの空気が16㎥以上なければならない」という事を言っています。

 スタンドロッカー:52×90×250なので、1個当たり約1.2㎥
 机と椅子:70×80×70なので、1個当たり約0.4㎥
 ベッド:(92×200×50)+(25×92×45)なので、1個当たり約1㎥

 自衛官候補生が詰め込まれる部屋は、通常の営内よりも天井が高いため自分で測って貰うしかありませんが、この基準よりも多く詰め込まれている場合は業務隊長に改善するように意見を言う事が出来ます。

 また、ベッド等を除いた床面積が一人当たり2,8㎡以上なければならないので、一人あたり約1,7m四方の床が無ければそちらの理由でも戦えますが、ソファーを無くせばギリギリ…などの場合はかえって自分の首を絞める結果になりますので、よく計算してから意見具申をして下さい。

陸士、陸曹になった後に通じる規則

 こちらは部隊に配属された後の陸士や陸曹が対象となる規則です。

 「独身だけど営外に住みたい!」という営内者がいれば、話を上手くまとめ易いですが、全員営内に住みたい場合は長期戦になる事を覚悟してください。

 根拠と話の持っていき方を説明します。

陸上自衛隊の施設の取得等に関する達

 根拠となる規則はこちらです。

陸上自衛隊の施設の取得等に関する達 別冊 1項 隊舎面積基準

 これは自衛隊の施設を建てる際の基準となる通達です。

 築年数が20年前後の営内隊舎なら概ね天井2,5m、横幅5,8m、奥行き4,8mと、微妙に基準を満たしていないサイズの部屋が多いと思いますが、誤差くらいは大目に見てあげましょう。

話の持っていき方

 この規則を見せて納得してくれる人がいれば、他部隊の営内と調整したり、新隊員受け入れの人数を調整したりしてくれるかもしれません。

 しかし、規則を見せた所で「だから何だ!足りない物は足りないんだから我慢しろ!」という理不尽な回答や、「あくまで建てる時の基準であって、運用する時の基準では無い」などのズレた事を言ってくる人達が殆どです。

 そのような回答が予想される人達でも、まずは「人員に対して営内のスペースが足りない」という趣旨の発言を相手から引き出し、言質を取りましょう。

 ここで取った言質が、次の交渉に生きてきます。

自衛官の居住場所に関する訓令

 訓令の中で自衛隊法施行規則を読み込んでいるので、そちらから先に引用します。

(陸上自衛官及び航空自衛官の営舎内居住義務)
第五十一条 陸曹長又は空曹長以下の自衛官は、防衛大臣の指定する集団的居住場所(以下「営舎」という。)に居住しなければならない。ただし、防衛大臣の定めるところに従い、防衛大臣の指定する者の許可を受けた者は、営舎外に居住することができる。

自衛隊法施行規則

(営舎内居住)
第1条 (自衛隊法施行規則、以下「規則」という。)第51条又は第52条第2項の規定により営舎内に居住すべきものとされている自衛官は、それぞれの勤務する防衛省本省の内部部局、施設等機関、幕僚監部、統合幕僚学校、自衛隊の部隊若しくは機関、情報本部、防衛監察本部若しくは地方防衛局又は防衛装備庁(以下「部隊等」という。)のために設けられた営舎に居住するものとする

2 前項に規定する自衛官で部隊等に営舎がないか又は不足しているため営舎内に居住することができないものは、営舎外に居住するものとする。

自衛官の居住場所に関する訓令

 この訓令では、営内の部屋が不足している場合に営舎外居住を認めています。
 ここには階級などの制限が記載されていないため、普段の素行に問題が無ければ営舎外居住許可申請を拒否する事は難しいでしょう。

 もし、正当な理由もなく拒否されてしまったら、下記の規則を持ち出して「法令に反して不当に営内者を詰め込んでいる」事について話し合いましょう。

(命令)
第15条 発令者は、いかなる場合においても法令及び上官の命令に反する命令
を発し
、又は自己の権限外にある事項を命令してはならない

陸上自衛隊服務規則

 まぁ、自衛隊の頭が固い老害は言っても聞かない事が多いので「法務官やパワハラ相談窓口に通報しますよ?」と言った方が効果が見込めると思います。

 どうしても折り合いがつかない時は通報する旨を上司に伝えるか、いっその事通報した後に事後報告しましょう。

まとめ

 「陸上自衛隊の施設の取得等に関する達」が相当マニアックな通達のため、営内者をどこまで詰め込んで良いのかわかっていない人が殆どです。

 営外居住を希望する隊員が居ない場合は、新隊員の引き取り人数を減らさせるか、長期戦覚悟で方面を通じて隊舎を建てる予算の申請を上げさせるくらいしか方法が無くなってしまいます。

 しかし、最初から頭ごなしに「規則に違反しているんだからすぐに変えろ!」という話をすると、やり方次第で上手くいく交渉も決裂してしまいます。

 交渉は「落としどころ」を探る事が大切です。
 現状が50で理想が100の場合、100の要求をして70~80くらいの要求を通す事が現実的です。

 相手の立場も考えた上で、メンツを潰さずにこちらの要求を通す方法を練ってから交渉のテーブルに着きましょう。

 「営内者に対して部屋が不足していて、規則の基準に適合していない」という認識を相手に持たせた上で、何の対策もせずその負担を一方的に営内者に押し付ける事はパワハラなので、どんどん公益通報窓口やパワハラ相談窓口に通報してパワハラ上司を駆逐しましょう!

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