自衛隊には色々と検定がありますが、その中でも新しい部類に入る格闘検定と、格闘技を教える教官について説明したいと思います。
格闘検定とは?
陸上自衛官は、最低2年に1回ある格闘検定に合格しなくてはなりません。(航空と海上には格闘検定は無いそうです)
格闘検定には3級~特級まであり、新隊員以外は2級を取る事が求められます。
具体的な技を書こうと思いましたが、公開されている資料には載っていなかったので書けませんでした。
訓練基準は部内限りだったと思うので出せませんが、公式な資料に記述があれば追記します。
とにかく一定水準の格闘技術を、男性でも女性でも身につけなければなりません。
自衛隊に入ってくる人全員が格闘技を経験しているはずは有りませんので、教える人が必要となります。
その格闘技を教える人こそが、厳しい訓練を乗り越えた隊員のみがなれる「格闘指導官」です。
格闘指導官とは
格闘検定の等級は3級~特級と説明しましたが、格闘指導官は特級の上という訳ではなく、格闘指導官も特級です。
何が違うのかというと、特級の中から教育に参加するための素養試験に合格した隊員のみが参加できる集合教育があります。
一ヶ月以上続く教育では毎週のように試験があり、合格できなければ※原隊復帰させられます。
※原隊復帰…強制的に所属していた部隊に帰される事
数ある試験を乗り越え続け、集合教育の最後にある認定試験に合格出来た隊員のみが部隊格闘指導官になる事が出来ます。
認定試験の具体的な内容は伏せますが、体力を極限まで消耗させられた後に100人組手のような事をやります。
教育には参加したが認定試験に合格できず、部隊格闘指導官になれないまま帰っていく隊員も毎回数名いる非常に厳しい世界です。
格闘指導官には「部隊格闘指導官」と「上級格闘指導官」の2種類があり、上級格闘指導官がより上位の指導官となります。
部隊格闘指導官は上記の通り、集合教育に参加し合格すればなる事が出来ますが、上級格闘指導官は体育学校で実施する「上級格闘指導官課程」に参加し合格しなければなる事は出来ません。
上級格闘指導官を目指すような隊員は、様々な格闘技の道場やジムに個人的に通っている人が殆どで、それくらいの熱意が無ければ上級格闘指導官にはなれません。
そのため上級格闘指導官は物凄く強い人が多く、部隊内でも若干恐れられています。
格闘指導官になると
通常の業務に加え、自身が所属する部隊の格闘訓練の計画作成やら、他部隊の格闘検定の支援やらで忙しくなります。
正直なところ、メリットは殆ど有りません。
ボーナスでSが貰いやすいとか、昇任が早くなるとか一切ないです。
格闘技のように複雑なものは同時に指導できる人数が少ないので、部隊全員を同時に訓練する事は不可能です。
少人数に小分けにして順番に実施しなければならないため、一般隊員は1~2週間の訓練に1回参加すれば済む訓練に毎回参加して指導しなければならない事になります。
その度に訓練場所や訓練資材の調整、訓練計画の作成、訓練中の監督指導、格闘検定の実施などの業務が入ってきます。
部隊によっては業務量を考慮される場合もありますが、自衛隊も人手不足なので大抵は一人分の業務を抱えつつ、追加で格闘に関する業務をやる事になります。
また、自分自身を高める事より教える事がメインになってしまうため、認定試験合格時がピークという指導官も沢山います。
まとめ
純粋に格闘技をやっているだけで給料が貰えるイメージしていた方もいらっしゃると思いますが、そんなに甘い話はありません。
しかし、陸曹候補生として入隊し普通科に配属されれば、数年間は徒手格闘競技会要員として格闘技+αの業務で食べていく事は十分可能です。(定年までずっとは無理です)
一握りの溢れる情熱と類稀な才能を持った隊員は、体育学校で自衛隊の格闘技を研究する仕事に就ける場合もあります。
ですが、本当に一握りで陸上自衛隊14万人の内12人くらいです。
部隊格闘指導官を志すと言われる事ですが、
「自分だけが強くなれば良いなら外の道場へ行け、格闘指導官は部隊全体を強くする者だ」
と言われます。
極限まで鍛えてクリリンくらい強くなれるなら話は別ですが、同じ地球人でもあそこまで強くなる事は現実的に不可能です。
どんなに武術を極めた人間でも、少し武術をかじった人間4人に囲まれたら勝ち目はほぼありません。
そのため他人に教える為にまず自身が強くなり、自身が強くなった後に仲間を強くし、部隊全体で有事に備える準備をするのが格闘指導官です。
今は格闘指導官が不足しているので、熱望すれば鍛え上げて貰えると思います。
こういう形で格闘技のプロになりたい方は、自衛隊で格闘指導官を目指してみてはいかがでしょうか?