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自衛隊に入るとSNSの使用が制限される!

 今の時代、生活にSNSの存在は欠かせません。誰しもLINEやTwitter、YouTubeやInstagramのどれか1つくらいは使った事があると思います。

 自衛隊に入ると、これらの使用にも気を使わなくてはなりません。
 今回は、自衛官のSNS利用の制限について解説していきます。

SNSとは?

 SNSとはソーシャル・ネットワーキング・サービスの略で、わかりやすく言うとインターネット上で文字、画像、動画などがやり取りできるサービスの事です。

 自衛隊では、一般的にはSNSと認識されていない物も含まれています。
 下記に書いてあるものは自衛隊でSNSと認識されているサービスの一覧です。

ユーザー同士の交流がメインの物
LINE、Facebook、Twitter、Clubhouse、5ch、mixi、出会い系サイトや各種インターネット掲示板

画像や動画の共有がメインの物

YouTube、Instagram、TikTok、ニコニコ動画、pixivなど

オンラインゲーム

PUBG、フォートナイト、荒野行動、Call of Duty、Identity V、人狼ゲーム等がスマートフォンなどで手軽に出来て人気ですが、MMORPGなどの本格的なオンラインゲームも含まれます。

情報発信がメインの物

Amebaブログ、はてなブログ、noteなどの各種ブログサービスや個人ブログ

 など例を挙げるとキリが無いですね。

 キャリアメールやフリーメールのやり取りや、電話番号に直接掛ける電話以外は、ほぼ全てSNS扱いをしていると思ってもらって構いません。

どんな事が制限されるの?

 具体的には4種類ですが、ガイドラインではSNS上で身分を明かす事も控えるように指導をしています。

①政権や政治家を支持したり批判するような政治に関する投稿
②勤務時間中の投稿(特別勤務中を含む)
③訓練や業務や部隊行動に関する投稿
④部隊や上司、他ユーザーなどの誹謗中傷

 例えば「週末に彼女とデート、楽しみだなぁ」「原宿で#タピ活」などの完全に私的な内容を、勤務時間外や休日に投稿するのは問題ありません。

 「災害派遣に行ってきます」「明日から2週間訓練に行ってきます」などの、自衛隊の行動が把握されるような内容の投稿や、訓練中、災害派遣中、駐屯地や自衛隊関連施設内の撮影禁止場所の写真の投稿は禁止されています。

なんでダメなの?

 グレーな部分もありますが、規則の解釈で大体カバーされています。

 まずSNSで発言する事は「不特定多数の人に自分の意見を言う事」に等しいと解釈されています。駅前とかでスピーカーで叫んでるようなものだと思ってください。

①政治に関する投稿

 自衛官は政治に関わる事を制限されています。
 これは国家公務員法や、自衛隊法などの法律で定められています。

(政治的行為の制限)
第百二条 職員は、政党又は政治的目的のために、寄附金その他の利益を求め、若しくは受領し、又は何らの方法を以てするを問わず、これらの行為に関与し、あるいは選挙権の行使を除く外、人事院規則で定める政治的行為をしてはならない
○2 職員は、公選による公職の候補者となることができない。
○3 職員は、政党その他の政治的団体の役員、政治的顧問、その他これらと同様な役割をもつ構成員となることができない。

国家公務員法

(政治的行為の制限)
第六十一条 隊員は、政党又は政令で定める政治的目的のために、寄附金その他の利益を求め、若しくは受領し、又は何らの方法をもつてするを問わず、これらの行為に関与し、あるいは選挙権の行使を除くほか、政令で定める政治的行為をしてはならない。

自衛隊法

 ざっくり言うと「選挙で投票する以外は政治の支援も批判もしてはいけません」という事なのですが細かく解説すると長くなるので専用記事を見てください。

②勤務時間中の投稿

 難しく言うと職務専念義務違反と言うのですが、簡単に言えば「仕事中に遊んでないで仕事しろ」って事です。一応法律の説明をします。

(職務に専念する義務)
第百一条 職員は、法律又は命令の定める場合を除いては、その勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職責遂行のために用い、政府がなすべき責を有する職務にのみ従事しなければならない

国家公務員法

(職務に専念する義務)
第六十条 隊員は、法令に別段の定がある場合を除き、その勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職務遂行のために用いなければならない

自衛隊法

 社会人として当たり前の事ですよね?
 本来は副業の禁止がメインなのですが、サボり禁止も兼ねています。
 これは仕事中にLINEをやったり居眠りで処分された例です。

当直中にスマホ持ち込み、不倫相手とLINE計12時間 2等海尉を減給処分 海自
海上自衛隊第21航空群(館山市)は13日、当直室に持ち込みが禁止されている私物のスマートフォンを無許可で持ち込み使用したとして、同航空群第21航空隊所属の男…
お探しのページが見つかりません|京都新聞

③訓練や業務や部隊行動に関する投稿

 これば先述の職務専念義務違反も混ざってくるのですが、例えば訓練中に写真を撮り課業時間外に投稿したとしても、訓練中に写真を撮るという余計な事をしているので、写真に問題が無かったとしてもアウトです。

 しかし、ここでは投稿した内容に問題があった場合について説明します。

 自衛官は仕事の特性上、国家防衛に関する色々な知識を持っているので秘密等を直接投稿する事はもちろん、一見何でもないような職務の情報であったとしても投稿する事を制限されています。

 例えばA、B、C、Dという構成の文書があったとして、それぞれ単体だけでは何の意味か分からなくとも、複数の隊員が違う内容を投稿すれば全体が見えてきてしまうためです。

 根拠となる法も紹介します。

(秘密を守る義務)
第五十九条 隊員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならないその職を離れた後も、同様とする

自衛隊法

 そのまんまですよね。
 何が秘密に該当するかは細かく決まっているのですが、そのあたりは割愛させて頂きます。

 ちなみにLINEのやり取りは全て韓国のサーバーを通しているため、情報漏洩の恐れがある事から、業務連絡などに使用する事は禁止されています。

 また、執務室などの勤務場所に携帯を持ち込む事も禁止されています。
 これはTwitterに船の色々な情報を投稿したために処分された例です。

お探しのページが見つかりません|京都新聞

④部隊や上司、他ユーザーなどの誹謗中傷

 公式の記事は残っていませんが、2018年末頃に現役自衛官がTwitter上で「自身が自衛官である事を匂わせつつ一般人にヘイト発言をし、それを注意した自衛官にも暴言を吐いたため、内部の人脈を駆使し特定され本名を晒される」という事案が起きました。

 自衛官には品位を保つ義務という物があり、常に自衛官として恥ずかしくない言動を求められます。

(信用失墜行為の禁止)
第九十九条 職員は、その官職の信用を傷つけ、又は官職全体の不名誉となるような行為をしてはならない。

国家公務員法

(品位を保つ義務)
第五十八条 隊員は、常に品位を重んじ、いやしくも隊員としての信用を傷つけ、又は自衛隊の威信を損するような行為をしてはならない。

自衛隊法

 なんかフワッとしてますよね。
 どこまでが良くて、どこからがアウトなのか線引きが曖昧でこれではよくわかりません。

 しかし、マスコミも良く使う「発言の一部を切り取って全く違う意味に変える事」が日本では常態化している事を視野に入れると、なんとなく想像できると思います。

 発言そのものはセーフだとしても、第3者によってアウトなレベルに加工され拡散されると収拾がつかなくなるため、Twitter等では自由に発言するため身分を隠している人が殆どです。

 これはSNS上ではありませんが、法では現実とネット上で扱いを変えていません。
 他人に対する暴言をした事で、品位を保つ義務違反で処分された例です。

| 毎日新聞

まとめ

 今やSNSも、マスメディアに匹敵する影響力を持っていると言っても過言ではありません。

 特に日本はTwitterのユーザー数が多く、広く一般に浸透している分、ツイートした内容は不特定多数のユーザーに見られ、その内容はリツイートによりさらに拡散していきます。

 自衛隊が嫌いで仕方ない国民も一定数いますので、そういった方に目を付けられると面倒な事になり、発言自体にリスクを伴うようになるため、SNS上で自衛官を名乗る事は控えるように指導されます。

 炎上騒ぎは定期的に起きていますが、一度起きてしまうと沈静化には多大な労力と時間がかかるのが、見ていてもわかります。

 また、炎上騒ぎが起きてしまうと、自衛隊としても内容に応じて当該隊員を処分しなければ、世論が黙っていないでしょう。
 そういった事態を避けるために、あらかじめ厳しく規制しています。

 しかし、こういった規制があるため自衛隊の内部の問題も外に出にくい状態なのは、問題があると思います。

 もっと自衛隊の良い所も悪い所もオープンにして、外からの声で自衛隊が良くなっていったら私としては大変うれしく思います。

 最後は少し記事の本旨とズレてしまいましたが、最後まで読んで頂き有難うございました。

参考法規類リンク

国家公務員法 第九十九条 信用失墜行為の禁止
       第百条   秘密を守る義務
       第百一条  職務に専念する義務
       第百二条  政治的行為の制限

自衛隊法   第五十八条 品位を保つ義務
       第五十九条 秘密を守る義務
       第六十条  職務に専念する義務
       第六十一条 政治的行為の制限

国家公務員のソーシャルメディア の私的利用に当たっての留意点

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