本当は、広報動画「自衛隊の ソレ、誤解ですから!」が上がってからすぐに書きたかったのですが、在職中だったのでとても書けませんでした。
今回はこの動画で紹介されている事をバッサリ切っていきます。
なお、見出しの下の画像は、上に埋め込んだ動画が出典となっております。
誤解① やっぱりみんな体育会系ですか?
自衛隊という組織そのものが体育会系です。
動画では「元帰宅部」などのよくわからないアピールをしていますが、自衛隊という組織は上意下達の体育会系そのままです。(軍隊なので当たり前ですが)
現在、中堅以上の隊員は体育会系の空気で育ってきているので若手隊員とそりが合わず、諍いの種になっています。
また、人格否定や暴行さえしなければ体力錬成を強要する事は服務指導上合法となっていて、揉めたケースもありましたが自衛隊として「パワハラには該当しない」と認めています。
自衛隊的には体力練成の強要は合法ですので、組織内部のパワハラ通報窓口に相談しても無意味です。どうしても何とかしたければ弁護士を雇って何とかするしかありません。
誤解② 毎日キツそう
動画内で「だいたい残業ありません」とか言っていますが、一部の部署や下っ端隊員だけです。
多忙な部署の一覧を作ってみました。
残業150時間超
・陸上幕僚監部
・内部部局
残業100~150時間くらい
・補給統制本部
・各方面総監部
・師団・旅団司令部
・各連隊・大隊本部
・システム通信団
・運用訓練幹部(役職名)
・年末や年度末の調達会計部
残業50時間以下
・一般部隊(特に普通科)
・補給処の現場ポジション
他にも色々とありますが、残業50~100時間くらいは普通にあるので割愛させて頂きます。
事務官という、防衛省に勤務している自衛官以外の職員には残業手当が出ますが、自衛官は給料の中に残業手当相当の額が含まれているので、100時間残業しても手当は出ません。
誤解③ 仕事は体育会系ばっかり?
動画内で「ラッパ吹いてます」「白衣の自衛官です」とありますが、音楽科や看護師等は全体から見れば1%にも満たない割合しかいません。
ちなみに動画内で吹いているラッパは、普通の隊員から人員を選出して半強制的に吹かせているので、ラッパを吹いているだけで給料が貰える訳ではありません。
通常の業務に加え、ラッパ手の育成や偉い人が来た時の送迎ラッパを吹いたりと仕事が増えます。
警衛(駐屯地の門番)に就くときもラッパ手を務めなければならず、駐屯地司令に下手なラッパを聞かせようものなら悪い意味で名前を憶えられてしまいます。(上手く吹けても特に何もありません)
確かに自衛隊内には会計、基地通信、音楽、医師、看護師、糧食、教師、事務職(在庫管理や契約関連)など様々な職業が存在しますが、そんな職に就けるのは極一部の隊員で殆どの隊員は訓練や力仕事をやっています。
誤解④ 自由が無さそう…
動画を見て頂ければわかると思いますが、全員駐屯地の中で過ごしています。
(駐屯地内に住んでいる隊員を営内者と言い、営内者を統括する人を営内班長と言います。)
外出をするためには、営内班長、所属している部隊の班長&課長、所属部隊長などの許可を貰わなければならないので、手間がかかります。
部隊によっては、前日までに申請を出さなければならないため、前もって計画しておかないと出られない事も多いです。
最近は、新しく建物を建てるなど営内者の駐車場は無くなっている駐屯地が多いため、個人で借りている駐車場まで行くのが面倒という理由もあります。
誤解⑤ 基地から出られないってホント?
入隊後4~5年間は、毎月の週末の半分出られれば良い方です。
営内者には残留というシステムがあり、有事の際に対応する人員を残しておかなければなりません。
また、GWや夏休み、年末年始などはド真ん中(12/31~1/2)に残留を付けられる事も多く、休みなのに駐屯地の中で過ごさなければなりません。
下っ端は残留を多く付けられ、偉くなるほど減っていくので、入隊してから当分の間は駐屯地からあまり出られないのを覚悟してください。
誤解⑥ 男ばっかり
防衛白書にもありますが、自衛隊の93.1%は男性です。(平成31年3月時点)
これを男ばっかりと言わなかったら、日本に男ばっかりの組織は工事現場くらいしか無くなってしまいます。(土木作業従事者の男性比率は98%)
女性の配属にはムラがあるので女性割合が高い部署もありますが、一部だけですので男ばっかりと言わざるを得ません。
まとめ
動画の内容は殆どアテになりませんでしたね。コメント欄も結構荒れていますし殆ど嘘です。
入隊してから後悔しないように、覚悟を決めて自衛隊に来て頂きたいと思います。
自衛隊の偉い人には、こういった小細工ではなく人が離れていかないような施策をしていかないと、人材離れに歯止めをかけられない事に気付いて欲しいです。
動画のVol.2がありますので、そちらについては次の記事をご覧下さい。