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静かな侵略「ハイブリッド戦争」と「グレーゾーンの事態」とは

 令和2年度防衛白書で取り上げられた「グレーゾーンの事態」や「ハイブリット戦」という言葉が有ります。
 2014年頃から広く使われ始めたこれらの言葉ですが、正確な意味をご存知でしょうか?

 今回はこの2つについて解説していきます。

ハイブリッド戦争とは?

 名前こそ聞き慣れないかもしれませんが古くから存在し、戦国時代で言えば内通者を送り込み民衆を混乱させたり、配下を裏切らせるような計略がハイブリッド戦争の原型となります。

 ハイブリット戦を防衛白書では下記のように定義しています。

 「ハイブリッド戦」は、軍事非軍事の境界を意図的に曖昧にした現状変更の手法であり、このような手法は、相手方に軍事面にとどまらない複雑な対応を強いることになります。

令和2年度防衛白書

 これだけだとよくわかりませんね。
 例えるなら

 ミサイルを撃ち込んだり、空母やイージス艦で攻めて相手国を占領し支配下に置く事を軍事による現状変更。(直接侵略)

 香港やハワイのように、移民による世論操作や経済掌握によって支配下に置く事を非軍事による現状変更といいます。(間接侵略)

 1度軍を編成してぶつけてしまうと全面戦争は避けられない事や、直接侵略はコストパフォーマンスが非常に悪いため、現在主流の戦争は主にハイブリット戦(間接侵略)だと思っていただいて構いません。

ハイブリット戦の具体的な内容とは

 それでは現代の戦争であるハイブリット戦の内容について解説します。

 防衛白書では下記のような定義となっています。

 国籍を隠した不明部隊を用いた作戦、サイバー攻撃による通信・重要インフラの妨害、インターネットやメディアを通じた偽情報の流布などによる影響工作を複合的に用いた手法が、「ハイブリッド戦」に該当すると考えています。

令和2年度防衛白書

 分かる人にはこれだけで分かりそうですが、この記事では防衛白書で想定されているハイブリット戦の内容を大きく2種類に分類して紹介します。

 分かり易くするために日本の案件を例として使用していますが、ここに記載した全てが日本に仕掛けられているという事ではありません。

軍事攻撃未満の嫌がらせ行為

竹島、北方四島のような離島の実効支配
 「ウチの国民が住んでるからウチの島」という理論で領土を占領します。

 現在の国際情勢では、実効支配している土地を無理に奪い取る行為は世界の理解を得られず敵を作ってしまうため極めて難しくなっています。

中国海警局船舶の尖閣諸島領海侵入
 「軍じゃなくて警察だからセーフ!」+「ウチの国が警備してるからウチの島」という理論で、国際社会に実効支配の建前を作って領土を奪いやすい雰囲気を作ります。

 雰囲気を作り終えたら上記の実効支配に移りますのでこの段階で阻止する事が重要です。

サイバー分野での攻撃や妨害
 クラッキングによる情報の窃取やシステムの破壊で相手国の能力をダウンさせます。

キラー衛星等による人工衛星の破壊
 相手国の人工衛星が上空にあると、上から常に監視されている状態なので情報が洩れてしまいます。
 かつては地上から破壊できる方法の研究が行われていましたが、人工衛星を狙って攻撃した事が相手国にバレてしまうため「人工衛星を破壊する人工衛星」の研究が進められています。

国籍不明の工作員による破壊活動
 テロやゲリラ戦のようなものです、ここまでやったら殆ど戦争です。

相手国を内側から崩す搦からめ手

金、女、(内臓)トラップ
 相手国の高官・軍人等に取り入り、弱みを握ってから脅迫してスパイに仕立て上げます。
 そこそこ知られている話ですが、日本の外交官等が何人か引っ掛かってしまい自殺に追い込まれています。

政治介入
 上記トラップにより相手国の権力者を工作員化したり、工作員を送り込み政治に介入させます。

 個人名や組織名を挙げる事は控えますが、日本では上記トラップに引っかかり弱みを握られているとされる大物政治家や、工作員と思われるような言動をする政治家、国損となる事ばかりしている政党が中国や韓国との関連性を指摘されています。

SNSや各種メディアを通して世論の誘導や教育の腐敗
 政治家や著名人を利用しメディアやSNS等を通じて世論操作を行ったり、偏った教育により次世代の自国の印象を良くしようとします。

 証拠はありませんが、日本では各種テレビ局、新聞社、日教組等は既に影響を受けていると言われています。

インフラの掌握
 自国の会社の製品を世界的なシェアとする事で、有事の際に社会基盤を支えているインフラを崩しやすくします。

 具体的には、中国人民解放軍と密接にかかわっていると言われている「Huawei」製の製品を世界シェアとする事で、有事の際に自社製品の脆弱な部分を突いてインフラを混乱させる事が出来る事などが挙げられます。

 また、「PayPay」は中国のQRコード決済システム「Alipay(アリペイ/支付宝)」と共通のシステムを使用しているため、登録した時点で中国のサーバーに情報が保存されると推測されています。

ハイブリット戦のまとめ

 大砲を撃ち合ったり、爆弾を落とし合っていた方がよっぽど分かりやすいですね。

 代表的な事を書きましたが、実際にはさらに多種多様な手段があります。

 時代の変化に伴い戦争の形態も刻々と変化しています。
 例に挙げた事だけでも自衛隊だけで対応する事は難しく、政府主導でハイブリット戦に臨まなくてはなりません。

グレーゾーンの事態(グレーゾーン事態)とは?

 「グレーゾーンの事態」とは、純然たる平時でも有事でもない幅広い状況を端的に表現したものです。

例えば、国家間において、領土、主権、海洋を含む経済権益などについて主張の対立があり、少なくとも一方の当事者が、武力攻撃に当たらない範囲で、実力組織などを用いて、問題にかかわる地域において頻繁にプレゼンスを示すことなどにより、現状の変更を試み、自国の主張・要求の受け入れを強要しようとする行為が行われる状況をいいます。

令和2年度防衛白書

 わかりやすく言えば、ハイブリット戦を仕掛けられている状態の事を「グレーゾーンの事態」と表現しています。

 現在日本は、ロシア、中国、韓国からハイブリット戦を仕掛けられているのでグレーゾーンの事態です。

 台湾も尖閣諸島の領有権を主張しているため、もう一ヶ国増えるかもしれません。

ハイブリット戦が主な手段になった2つの理由

 人間の戦争の方法は常に変わり続けていますが、ハイブリット戦争のような「直接武力を用いない戦争」というものに変わったのは大きく分けて2つの理由があります。

通信技術や交通手段の発達によるグローバル化

 ここ30年程でコンピューターや通信手段、交通手段や物流は急激な成長を遂げ、世界のグローバル化が進みました。

「グローバル化」とは、情報通信技術の進展、交通手段の発達による移動の容易化、市場の国際的な開放等により、人、物材、情報の国際的移動が活性化して、様々な分野で「国境」の意義があいまいになるとともに、各国が相互に依存し、他国や国際社会の動向を無視できなくなっている現象ととらえることができる。

文部科学省公式HPより

 国家同士の結び付きが強まった事や、国際連合等の働きにより直接戦争をするなら全世界を相手にしなければならない状況が作られているため、直接戦争をしなくとも自国の利益を得るための「力」が求められました。

「力」という概念の変化

 動物だった頃は爪や牙、やがて槍や弓矢等の武器が発明され武器の質が石→青銅→鉄と上がっていきます。
 その後は爆弾や銃が主流となっていきますが、今までは物質に依存した目に見える戦争でした。

 その本質は相手を屈服させる「力」というものが、相手の肉体を制圧する暴力しか存在しなかったためです。
(相手を陥れるような計略はありましたが、圧倒的な戦力差がある状況を作り屈服させる為の補助的な手段でした)

 しかしその「力」を増大させ続けた結果、核兵器の開発により人類は地球を滅ぼす事すら可能となってしまった為、迂闊に行使する事が出来なくなってしまいました。

 その為、「力」ではない新たな戦争の道具が必要となり、目をつけられたのが「人」です。

 第2次世界大戦以降は世界的に人権が尊重されるようになったため、今まで好き放題していた支配階級も法で縛られるようになり、1部の人間が独占していた政治が一般市民にも解放されました。

 そのため、先進国では平等かつ最も愚かな「多数決」という方法が政治のスタンダードとなりますが、賢者と愚者、愛国者と工作員のすべてが等しく1票を持っています。

 各種トラップで工作員を作り出し、相手国の愚者を扇動すれば多少なりとも相手国の中枢に食い込めます。

 後は少しずつ勢力を拡大していけば良いので、時間はかかりますがいずれ乗っ取る事が可能となります。

 大きくなりすぎた為に行使できなくなった「力」、近年急速に進んだ民主化により「人」そのものが一定の力を持つようになったため戦争の手段が変わったと言えるでしょう。

まとめ

 まずここまでの内容をざっとおさらいします。

ハイブリット戦…軍事力以外なら何でもありの非暴力戦争
グレーゾーンの事態…ハイブリット戦を仕掛けられている状態
なぜ必要なのか?…他国を軍事力で侵略出来る世界情勢では無くなったから

 ハイブリット戦争は世界中で起きていて、記事論文はいくつもあります。
 EUなど国単位で対策を講じている国家も多く、決して私個人や嫌韓嫌中派や陰謀論者の戯言ではありません。

 世界は一見平和ですが、形が変わっただけで今も日々戦争を繰り広げているとも言えます。

 この記事では事実のみを淡々と書いていく事にしているので具体的な事は明言しませんが、ハイブリット戦という概念を知った上で現在の日本の状況を鑑みると符合する点は数多く有ると思います。

 この戦争は軍隊だけではどうする事も出来ません。
 敵は待ってくれませんので、政府と国民が協力して対応していかなければ数世代後には完全に乗っ取られてしまうでしょう。

 特にロシアや中国は世界中の国にハイブリット戦争を仕掛けています。

 この記事を読んだ方が、少しでも日本の将来について考えて頂ければ幸いです。

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