令和2年9月17日 岸大臣着任訓示
この度、防衛大臣を拝命いたしました岸信夫です。
25万人の防衛省・自衛隊の諸君とともに、我が国の防衛という国家存立の基本である崇高な任務を担うこととなり、大変光栄に感じるとともに、あらためてその重責に身が引き締まる思いです。
諸君も十分認識しているとおり、我が国を取り巻く安全保障環境は、極めて速いスピードで変化し、一層厳しさと不確実性を増しています。
周辺地域の動向を見ると、北朝鮮は依然として我が国を射程におさめる弾道ミサイルを数百発保有しています。
昨年来、相次いで、短距離弾道ミサイル等を日本海に発射し、ミサイル関連技術の高度化を図っていることを示しました。引き続き、北朝鮮の軍事動向は、わが国の安全に対する重大かつ差し迫った脅成です。
中国は、透明性を欠いたまま軍事力の質・量を広範かつ急速に強化しつつ、我が国周辺海空城における活動を拡大・活発化させています。
また、宇宙・サイバー・電磁波といった新たな領域が死活的な重要性を持つようになるとともに、ゲームチェンジャーとなりうる最先端技術が安全保障の在り方を根本的に変えようとしています。
さらに、我が国国内では、近年、地震や記録的な豪雨といった大現模な自然災害が頻発しています。
私は、このような厳しい環境下にあって、 国民の生命と平和な暮らしを守り抜き、 国際社会の平和と安定に貢献するため、皆さんとともに、全力で職務に邁進する所存です。
今回の大臣就任に当たり、菅総理から頂いた指示を踏まえ、これから私が諸君と共に取り組むべき課題について、私の所見を述べたいと思います。
一つ目の課題は、我が国自身の防衛体制の強化です。
防衛力は、安全保障の最終的な担保です。
これまでに直面したことのない安全保障環境の現実の下で、 国家として存立を全うするため、我が国の主体的·自主的な努力によって防衛力の質・量を強化していかなければなりません。
宇宙・サイバー・電磁波を含む全ての領域の能力を有機的に融合させる「領城横断作戦」を行うことができ、また、平時から有事までのあらゆる段階において、 柔軟かつ戦略的な活動を常時継続的に実施できる、 真に実効的な防衛力である「多次元統合防衛力」の構築は待ったなしです。
従末の陸・海・空という区分けや既存の予算・人目を前提とする発想から脱却し、 諸君とともに、防衛省・自衛隊一丸となって、真に実効的な防衛力の構築に全力で取り組んでまいります。
また、弾道ミサイル等の脅威から我が国を防衛しうる迎撃能力を確保するためのイージス・アショアの代替案や、 抑止力を強化するためのミサイル阻止に関する安全保障政策の新たな方針について、今年末までにあるべき方策を示し、速やかに実行に移すよう、総理から御指示をいただいており、しっかりと取り組んでまいります。
二つ目の課題は、日米同盟の強化です。
本年は、日米安保条約の締結から60年の節目にあたります。 日米同盟は、我が国自身の防衛体制とあいまって、 我が国の安全保障の基軸であると同時に、 インド太平洋地域さらには国際社会の平和と安定及び繁栄に大きな役割を果たしています。
これまでの日米ガイドラインの改定や、 平和安全法制といった立法努力によって、日米同盟は非常に強固なものとなっています。
今後とも、日米ガイドラインに基づき、宇宙・サイバー・電磁波領域など、様々な分野で両国の協力を進展させ、日米同盟の抑止力と対処力を一層強化させてまいります。
同時に、日米同盟による抑止力を維持しつつ、地元の基地負担を軽減するための取組も重要です。特に、現在も多くの米軍施設・区域が集中している沖縄の負担軽減のため、 全力で取り組んでまいります。
三つ目の課題は、各国との安全保障協力の強化です。
「自由で開かれたインド太平洋」というビジョンを踏まえ、防衛力を積極的に活用しながら、地域の特性や相手国の実情を考慮しつつ、 多角的・多層的な安全保障協力を戦略的に推進してまいります。安全保障協力の推進にあたっては、日米同盟を基軸とし、普遍的価値や安全保障上の利益を共有する国々との緊密な連携を図っていく所存です。
また、海洋における航行・飛行の自由の確保、 宇宙領域の利用、 大量破壊兵器拡散といったグローバルな課題に対し、 関係国と協力し、 引き続き積極的に貢献してまいります。
私は、国民の生命と平和な暮らしを守るため、 常に全隊員の先頭に立ち、 全身全業で困難に立ち向かう所存です。諸君も、国民からの負託に応えるべく、 高い倫理意識を持って、研鑽を重ね、一丸となって任務に精励していただきたいと思います。 隊員諸君の奮励努力を期待し、私の着任の訓示といたします。
令和二年九月十七日
防衛大臣 岸信夫