今回は、自衛官が駐屯地や基地の中に住まなければいけない理由と、自衛官が駐屯地の外に住むために必要な条件について解説していきます。
幹部候補生などは比較的早く外に住めるため、主に自衛官候補生や陸曹候補生という1番下の階級で入ってくる隊員向けの解説をしていきます。
自衛官と結婚を考えている方や、入隊前に結婚されている方が自衛官になる際の参考にしていただければと思います。
なぜ駐屯地の中に住まなければいけないのか?
まずはこちらをご覧ください。
(指定場所に居住する義務)
自衛隊法
第五十五条 自衛官は、防衛省令で定めるところに従い、防衛大臣が指定する場所に居住しなければならない。
(陸上自衛官及び航空自衛官の営舎内居住義務)
自衛隊法施行規則
第五十一条 陸曹長又は空曹長以下の自衛官は、防衛大臣の指定する集団的居住場所(以下「営舎」という。)に居住しなければならない。ただし、防衛大臣の定めるところに従い、防衛大臣の指定する者の許可を受けた者は、営舎外に居住することができる。
駐屯地の中に住む事を営内居住と言いますが、幹部自衛官以外は規則で営内居住が義務付けられている事になります。
有事の際にすぐに動ける人員を確保しておく事や、集団生活を通じて若手隊員の成長を促すのが目的です。
知る限りまっとうな理由で使われた事は有りませんが、幹部自衛官であっても勤務上の必要があれば営内居住を命令されてしまうので、自衛官である限り真の自由は訪れない事になります。
外に住むためには?
外に住むためには何種類か条件があります。
①幹部自衛官になる。
②1曹、曹長の階級になる。
③2曹かつ30歳以上になる。
④結婚する。(ただし出られるのは入隊2年後以降)
②や③を実現するには10年弱かかるため、即効性はありません。
入隊前から結婚を考えている方は①狙いで一般幹部候補生という採用区分で入隊を目指しましょう。入隊後9ヶ月~1年程度で外に住む事が出来ます。
④の赤線部分については次項で説明します。
なぜ2年間外に出られないのか?
営外居住を許可できる人を定める規則で決まっているので解説します。
(営舎外居住の許可)
陸上自衛官の居住場所に関する達
第2条 営舎外居住許可権者は、陸上自衛隊服務細則 第78条第2項に定める基礎服務期間にある者については、訓令第2条第1項第3号の規定を満たし、かつ、特別の事情のある者を除き、原則として営舎外居住を許可しないものとする。
と書かれています。
なんとなく予想はついていると思いますが、続けます。
(営内生活)
陸上自衛隊服務細則
第 78 条 営内生活は、日常の苛烈な訓練と相まって、自衛官の使命達成に寄与するものであるから、その指導に当たっては、勤務に伴う疲労を回復し、新鋭の気を養って次の勤務にますます精励することのできるような家庭的環境を築くことに努めなければならない。
2 陸士については、入隊後の2年間を基礎服務期間とし、自衛官としての基礎の育成を図るものとする。
ぐうの音も出ない程バッチリ記載されていますね。
暗黙の了解や通例等ではなく「規則で定められているから出られない」これに尽きます。
まとめ
陸上自衛官の居住場所に関する達で「基礎服務期間の営舎外居住」を禁止していて、陸上自衛隊服務細則で「入隊後2年間の基礎服務期間」を設定しているため、入隊後2年間は結婚したとしても外に出られないコンボが出来ています。
特別の事情を除きと書いてあっても、自衛隊は極めて頑固な前例主義かつ前例の無い事に許可を出す事を毛虫よりも嫌います。
隊員と配偶者の両方に親族が誰もいない状態で、入隊後に配偶者が要介護とかにでもならない限り許可は出ないと言って良いでしょう。
自衛官の採用年齢が上がっているのにこのあたりの法整備が進まないのは、規則を決める偉い人が営内で生活をした事が無いからです。
また、所詮他人事で「若い奴は苦労してナンボ」「余計な事は考えないで黙って働け」みたいな考えが根付いているため、いつまでも改善されず「昔からこうだからこのままで良いだろう」的な結論に至ります。
独身で一般幹部候補生以外の採用区分で入隊した場合、独身のまま外で暮らせるようになるには最短で9年程度、成績が悪いと20年近く駐屯地の中で暮らす覚悟を決めて入隊してください。