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自衛官の政治的行為の制限について

 今回はちょっと堅苦しい話題を、誰よりも簡単に説明しようと思います。

 かみ砕いてわかりやすい説明をしますが、正確な情報を書くために途中に小難しい事も書きます。面倒な方は読み飛ばしていただいて構いません。

 さらに正確な情報を知りたい方向けに、最後に原文のリンクを貼っておくのでご確認ください。

政治的行為とは?

 分かりやすく言うと、「どこか一つの内閣、政党、議員、候補者を応援したり非難する」です。

 応援には、後援会に自分が加入したり知人を勧誘する事や、SNSに「コロナの対応は良かった」などと書き込む事や、他人に「今回の選挙は〇〇さんに投票する」とか「〇〇党良いよね!」などの発言をする事も含まれます。

 最初に書いたように、「〇〇党は消えろ」や「〇〇総理はケチ」や「〇〇議員は宇宙人」などと非難する事も政治的行為に含まれます。

 自衛隊法施行令の第87条に「政治的行為の定義」が定められていて、およそ選挙や政治に関わる事の全てが網羅されるくらい、細部まで記載されています。
(1番下に原文リンクがあります)

ダメな理由は?

 簡単に言うと「規則で決まっているから」です。

 自衛隊法第61条に「政治的行為の制限」という条文があり、隊員の政治的行為を禁止しています。
 また、自衛隊法施行令第86条と87条でどのような事が政治的行為に当たるか記載されています。

 厳密には身内同士でも「〇〇党に投票した」とかを喋ると先述の規制に引っ掛かりますので奥様に聞かれても絶対に言わないという方もいます。

どうしてそんな規則があるの?

 「文民統制(シビリアンコントロール)のため」です。

 文民統制とは、おおまかに「軍隊は政治の下に管理されていなければならない」といった意味合いの言葉で、先進国では当たり前の制度です。

 自衛隊も例に漏れず内閣総理大臣が最高指揮監督権を持っています。

 自衛官は入隊時に服務の宣誓という「自衛隊に入るからには覚悟を決めて頑張ります!」みたいな誓いを立てさせられるのですが、その中に「政治的活動に関与せず」という1文が含まれています。

 これは政治の管理下に置かれている自衛隊が、管理する政治側に介入する事を防ぐためです。

 例えば自衛官がインフルエンサーになって世論を動かし、自衛隊や自衛官に都合の良い政治に作り変えさせないために規則が存在しています。

自衛官が出来る政治的行為は?

 投票(以上です)

 これだけだとあまりにも味気ないのですが、投票以外では下記の解説で紹介する事以外に自衛官が出来る政治的行為は有りません。

 正直なところ、個人同士の雑談レベルなら色々有ったり無かったりするのですが、万が一それを第三者に聞かれてしまうと面倒な事になりかねません。

 100%身内しかいない空間ならともかく、公の場やSNS上で政治に関する発言はタブーになっています。
 Twitterでリツイートする時に個人的意見を付ける事すら許されていません

 また、たまに「自衛官には選挙権がない」みたいな事を見かけますがデマです。
 自衛官にも選挙権はあります。

 余り需要は無いと思いますが、自衛官が可能な政治的活動のギリギリのラインを解説します。

 (注)以下の文は、自衛隊法施行令を分かり易くするために一部の省略、くどい表現の削除などで改変してあります。

(政治的行為の定義)
第八十七条 政令で定める政治的行為は、次の各号に掲げるものとする。
一~十四については省略
十五 政治的目的をもつて、政治上の主義主張又は政党その他政治的団体の表示に用いられる旗、腕章、記章、えり章、服飾その他これに類するものを製作し、又は配布すること。
十六 政治的目的をもつて、勤務時間中において、前号に掲げるものを着用し、又は表示すること
十七 なんらの名義又は形式をもつてするを問わず、前各号の禁止又は制限を免かれる行為をすること。

2 前項各号に掲げる行為(第三号の場合においては、前項第十六号に掲げるものを除く。)は、次の各号に掲げる場合においても、法第六十一条第一項に規定する政治的行為となるものとする。
一 公然又は内密に隊員以外の者と共同して行う場合
二 自ら選んだ又は自己の管理に属する代理人、使用人その他の者を通じて間接に行う場合
三 勤務時間外において行う場合

自衛隊法施行規則

 つまり、『勤務時間外に「政治上の主義主張や政治的団体の表示に用いられる旗、腕章、記章、えり章、服飾その他これに類するもの」を着用し、又は表示することだけは認められています。

 ただし、旗を持ったりゼッケンを着る所までしか許されていないので、デモ&イベントの参加や、通行人にビラを配ったり声をかけたりする事は禁止されています。

まとめ

 自衛官は「どこか一つの内閣、政党、議員、候補者を応援したり非難する事は、文民統制の為にやってはいけない。」と規則で定められています。

 政治的行為の制限は自衛官が受ける制限の中でもかなり厳しい物の一つで、文民統制の為とはいえ投票以外ほぼ何もできませんし、過失であろうとやらかした時の処分は重いです

 身近に自衛官のいる方はそういう事情がある事を理解してあげてください。

 また、自衛官や自衛官になろうとする人は、Twitterなどで自衛官である事を公表していたり、自衛官だと特定できそうなアカウントなどで政治に関する事をつぶやくと、処分の対象になるのでくれぐれも注意してください。

参照法規類リンク

国家公務員法
第百二条(政治的行為の制限)

自衛隊法
第六十一条(政治的行為の制限)

自衛隊法施行令
第八十六条(政治的目的の定義)
第八十七条(政治的行為の定義)

自衛隊法施行規則
第三十九条(一般の服務の宣誓)

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