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自衛隊の階級と内部試験について徹底解説!

 皆さんは自衛官の階級はご存じですか?
 また自衛隊で偉くなるにはどうしたら良いか知っていますか?

 自衛隊には様々な採用区分や部内試験があり、出世ルートも様々です。
 今回は自衛隊の階級や試験について説明します。

自衛隊の階級一覧

 まずはこちらをご覧下さい。

 厳密には幕僚長は役職扱いなので、階級自体は2士~将までの16階級で構成されています。
 また、表には記載されていませんが統合幕僚長という陸海空自衛隊を束ねる役職も存在します。

 次のページから長文なので一回ここで区切ります。
 2ページ目:曹士の解説
 3ページ目:幹部の解説
 4ページ目:部内試験や昇任に絡む入校の解説

 となっていますので、興味の無い部分は飛ばしていただいて構いません。

それぞれの階級について

 部内試験の略称が出てくるので、気になる方は先に4ページ目を読んで下さい。

曹・士

陸士長・1等陸士・2等陸士
 陸曹候補生を除き、2年更新の任期制隊員です。
 Twitterによくいる元自衛官を名乗るアカウントは高確率でこれです。

 入隊直後は自衛官候補生といい、自衛官としての身分を与えられていませんが、半年の教育終了後に2等陸士として任官します。
 陸曹候補生の方が早く陸士長になりますが、自衛官候補生でも必ず陸士長になります。

 自衛官候補生として入隊すると、1任期ごとに任満金という100万円前後のボーナスが貰えます。
 詳しくはこちら

3等陸曹
 ここからが定年まで勤務できる階級となります。
 陸曹の下っ端として主に陸士の教育や技術の習得に励みます。
 定年は53歳。

2等陸曹
 やっと1人前の陸曹になったなという感じです。
 この階級になって30歳を超えると営外居住をする事が出来ます。
 早い人は24歳くらい、遅い人は30後半でなります。
 定年は53歳。

 同じ事の繰り返しになるのでここに纏めて書きますが、2曹~3佐の階級は配属されたポストによって仕事の量に違いが出やすいです。

 同じ階級でも5時ピンで残業無しのポストもあれば、毎日21時過ぎまで残業漬けの人や、繁忙期のみ毎日22時過ぎなど、人によって様々ですが給料は変わりません。

 因みに自衛隊は国民の平均と比べて、うつ病などの精神疾患や自殺率が明らかに高いのは、こういった激務が一因です。この事に関する記事はこちら

1等陸曹
 ここまでは特段役職を与えられる事は余り無いモブで、陸曹になれば確実に到達できる階級です。

 この階級になると年齢に関係なく営外居住をする事が出来ます。
 早い人は28歳くらいでなりますが遅い人は40過ぎてもなれません。
 定年は54歳。

陸曹長
 各部隊の「先任」と呼ばれる、部隊長の補佐を務める事が多い階級です。

 大部分の陸曹の最終到達点で、幹部候補生も一時的にこの階級になりますが、通常の陸曹長より幹部候補生の方が上とされています。

 36歳~50歳の曹長はSLCの受験資格を得て幹部になる事が出来ますが、非常に多忙な幹部になりたがる者は極少数です。

 優秀な陸曹は若い内にこの階級に達してしまいますが、そのまま准陸尉になってしまうと定年まで昇任させられず人事的にも困るため、半強制的にSLCを受験させられます。(よほど試験結果が酷くなければ合格してしまいます)
 定年は54歳。

准陸尉
 各部隊の「先任」と呼ばれる部隊長の補佐を務める事が多い階級です。

 陸曹上級課程の成績優秀者が到達できる幹部と陸曹の中間に位置する階級で幹部にならなかった者が到達する最上位の階級となります。(扱いは一応幹部です)

 米軍を真似た「最先任上級曹長制度」という制度では、曹士の人事権を有しそれなりの地位になる筈でしたが、実際は部隊長の補佐役という役割に留まっています。
 定年は54歳。

尉官

3等陸尉
 小隊長や上位の幹部の補佐役を務める事が多い階級です。
 幹部候補生学校を卒業した後、幹部任官と同時に与えられる階級で幹部の下っ端です。幹部学校の成績順に昇任していきます。

 任官と同時に幹部初級課程(BOC)に入校しますが、BOCは昇任に余り影響しません。

 経験を積んでから幹部になったSLC組を除き「尻に殻の付いたヒヨコ」である場合が殆どで、中隊長と曹長の間で板挟みとなり、早々に中間管理職の苦しみを味わいます。

 また、仕事も2尉と並んで非常に多忙な場合が多く、幹部はここを乗り越えて偉くなっていきます。
 定年は54歳。

2等陸尉
 小隊長や上位の幹部の補佐役などを務める事が多い階級です。
 3尉候補者課程(SLC)で幹部になった者の殆どはここで頭打ちになります。

 幹部に任官して少し経験を積み、使えるようになった頃なので、高級幹部が使いやすいヒラ幹部として山ほど仕事を浴びせられます。
 定年は54歳。

1等陸尉
 中隊長、機関の班長などを務める事が多い階級です。

 幹部に任官した殆どの人が到達する階級で、むしろこの辺りからCGSなどの出世競争が始まると言っても過言ではありません。

 この階級も中々の激務ポジションが多くまだまだ試練は続きます。
 定年は54歳。

佐官

3等陸佐
 大隊長、中隊長、機関の班長等を務める事が多い階級です。
 幹部任官後5年程度で入校する幹部上級課程(AOC)を卒業すると到達可能になる階級です。
 尚、AOCを卒業するとCGSFOCの受験資格が得られます。

 各方面総監部や市ヶ谷にある陸上幕僚監部では死ぬ程こき使われ易いので、故障者が出やすい階級です。
 定年は55歳。

2等陸佐
 副連隊長、大隊長、機関の筆頭課長、分屯地司令などを務める事が多い階級です。(この辺りから仕事的に楽になってくる事が多いです)

 CGSに合格しなかった者が受験する、幹部特修課程(FOC)の合格者の殆どはここで頭打ちになります。FOCの受験回数は5回までとなっています。
 定年は55歳。

1等陸佐
 連隊長や機関の部長などを務める事が多い階級です。
 40歳未満の1尉~2佐の希望者(半強制)が受験する指揮幕僚課程(CGS)に合格すると到達できる階級です。

 ここまで来られると再就職に苦労しませんし、給料も大きく上がってきます。
 CGSは試験の難易度も高く生涯で4回しか受験出来ない為、到達のハードルは非常に高いです。
 定年は56歳。

将官

陸将補
 駐屯地副指令や規模が小さい駐屯地の司令などを務める事が多いです。

 1佐の中からCGS卒業時の成績や勤務状況などを加味して選抜された人間が幹部高級課程(AGS)に入校し到達できる階級です。

 陸上自衛官14万人の内、ここから上の階級は100人もいない超エリート。
 定年は60歳。

陸将
 階級としては1番上で駐屯地司令や方面総監などを務めます。

 ここまでは一般幹部候補生や部内幹部候補生から幹部になっても到達可能で、1号俸でも年収1000万以上のお金持ちです。(ゲス)
 定年は60歳。

陸上幕僚長
 陸上自衛隊を運用する最高責任者です。

 陸将から選出されますが幕僚長になると定年が2年延びるため、1歳年上の人が幕僚長になると自身の着任は絶望的となります。

 防大創立後は防大出身者しか選ばれていません。
 定年は62歳。

統合幕僚長
 防衛大臣の補佐ですが政治家が自衛隊の運用をする事は不可能なため、事実上の陸海空自衛隊の総司令官です。

 陸海空からある程度持ち回りで選出され、防大創立後は防大出身者しか就いていない役職です。
 定年は62歳で退官後に勲章(瑞宝大綬章)が授与されます。

主な部内試験や入校

 基本的に自衛隊の試験は
 1次試験に一般教養と自衛隊科目(服務や戦術など)の筆記試験
 2次試験に体力試験と面接
 があると思って問題ありません。

 以下の解説は試験の名前のみ太字にしてあり、入校などは細字のままです。

陸曹候補生試験(部内)
 自衛官候補生として入隊し、任期制隊員として勤務している陸士長が陸曹候補生になる試験です。
 任満金の支給が無くなり、リミットも陸曹候補生として入隊するよりシビアになるのでメリットは薄いです。

陸曹候補生選抜試験
 陸曹候補生が陸曹になるために受験する試験です。
 成績が良くても合格枠が無いと落ちてしまうため、曹候補生として採用されても陸曹になれず自衛隊を去る曹候補生はそこそこいます。
 自衛隊は1日も早くこの悪しき制度を改善するべきです。

陸曹教育隊
 選抜試験合格者が教育を受ける場所です。
 ここの成績次第で後の人生が決まると言っても過言では無いくらいで、卒業時の成績順で准陸尉まで昇任します。

部内幹部候補生試験
 3曹任官後4年目以降かつ、36歳未満の者が幹部になるため受験する試験。
 陸曹教育隊の成績が悪かった者は出世できないため、この試験で逆転する事を勧められます。
 若い内に合格できれば、防大生や一般幹部候補生と互角に出世が可能です。

中級陸曹課程
 2等陸曹に昇任した者が必ず入校する教育です。
 令和元年度に集合教育から課程に変わり、成績が昇任に影響するようになりました。

陸曹上級課程
 1等陸曹に昇任した50歳未満の者が受ける、准陸尉の昇任に必須となる教育です。
 こちらは課程から集合教育に変更されているのですが、名前は据え置きのようです。

3尉候補者課程(SLC)
 入校の時点で、36歳以上50歳未満の准陸尉または陸曹長が受験する試験。
 原則2尉まで昇任しますが、一部の優秀者は1尉まで昇任します。

幹部候補生学校
 幹部候補生が入校する学校で、ここでの成績が後の出世速度の全てを決めると言っても過言ではありません。

幹部初級課程(BOC)
 3尉任官と同時に受ける教育、成績は昇任に大きく影響しません。

幹部上級課程(AOC)
 3尉任官後5~6年で受ける教育。
 これを修了しないとCGSの受験資格が得られません。

指揮幕僚課程(CGS)
 将になるには避けて通れない関門。受験回数は4回までです。
 上記AOCを修了した40歳未満の2尉~3佐の者が受験できます。
 CGSの成績で陸将になるか1佐で終わるかが決まります。

幹部特修課程(FOC)
 上記CGSに受からなかった者が受験する試験。受験回数は5回までです。
 殆どの者が2佐止まりですが、極一部の成績優秀者が1佐になれます。

幹部高級課程(AGS)
 CGSを修了した1佐~2佐から成績や勤務評定、同期の評判などから選ばれた者が受けられる教育で陸将補以上になるために必須の教育です。

 入校候補者の防大や幹部候補生学校の同期には、陸上幕僚監部から書類で「防大△△期〇〇1佐は陸将に相応しいだろうか?」といったアンケートが回ってきて、書類上では見えない資質までチェックされます。

 それ故、陸将補以上の自衛官は陸上自衛隊14万人中100人も居ないエリート中のエリートで、能力と人徳を兼ね備えた素晴らしい人が殆どです。(が、わりと変な人多いです)

まとめ

 階級は何となく知っている方でも部内試験の事はマニアックすぎて知らなかった人も多いと思います。

 意外な事に自衛隊は、陸曹と幹部のどちらでも入校や教育などの期間限定の学校や、日々の業務で規則や根拠の確認など、常に勉強し続ける事が多い組織です。
(怠って前任者の仕事をコピペしている人も多いですが)

 また、陸上自衛隊で出世するためには、市ヶ谷にある陸上幕僚監部の勤務経験が無ければなりませんが、ここの勤務環境はブラック企業の比ではありません。

 課業時間を過ぎてから「明日の朝イチまでにこの資料作っておいて」や、昼過ぎに「今日中にこの報告書類まとめて部長決裁貰って」などの無茶振りのオンパレードで自分の仕事が進まないのは日常風景です。

 土曜の朝に帰宅し日曜の夕方に出勤する隊員も多く、平日は職場で寝泊まりするか半ば強制的に追い出されて市ヶ谷駐屯地の隣にある「グランドヒル市ヶ谷」に泊まっています。

 私は陸幕の中に入った事が有りますが、職場で寝泊まりしている隊員が多いため、職場に生活感があります。
 表から見えない所に簡易ベッドが設置されていたり、歯ブラシなどが置いてあったり、そこはかとなく生活臭がします。

 自衛隊で出世を目指す方は、色々と覚悟して入隊して下さい。

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