【判例あり】なぜ公務員が同人活動をやるのはダメなのか

時事ネタ

2021/5/31追記

 Twitterのトレンドに「副業禁止」が入っていたので、調べてみたらこのような事が有りました。

 高知県教育委員会は18日、営利活動を禁じる地方公務員法に違反したとして県立特別支援学校の40代の女性教諭を戒告の懲戒処分とした。
 高知県教育委員会によると、女性教諭は漫画の同人誌を製作。2013年2月から約7年半、即売会やネット通販で52作品1万7千部を売り、約175万円の利益を得ていた。

高知新聞

県立特別支援学校の40代女性教諭が、県に無許可で同人誌を執筆し販売していたとして戒告の懲戒処分を受けています。
女性は2013年から今年10月までの間に52作品を販売。
1100万円を超える売り上げがあり、およそ175万円の利益を得ていました。

FNNプライムオンライン

 厳密には公務員は副業を禁止されている訳ではなく、制限されているので許可を取れば副業可能です。
 しかし、許可が下りる事は殆ど無いため事実上は禁止されているようなものでしょう。

 こちらは、まだ結果は出ていませんが副業申請を上げた教員が教育委員会の対応を不服に思っって裁判を起こした話です。
 裁判の結果次第で流れが変わるかもしれませんが、現在は副業の許可を取る事は事実上不可能と言っていいレベルです。

 因みにTwitterに色々と書かれていた「信用失墜行為の禁止」や「秘密を守る義務」や「職務に専念する義務」には該当しません。

 これらに触れたらその理由で処分されます。
 処分した理由をいちいち副業禁止に変更したりしません。

 では、同人活動が副「業」に該当するかどうか?
 そこが懲戒処分のポイントですし、これを読んでいる皆さんの知りたい事だと思います。

 まずは具体的に何をしたら業=事業に該当するか解説します。

事業の基準

 過去の最高裁の判例にこのようなものが有ります。

さっと読める! 実務必須の[重要税務判例] 【第42回】「弁護士顧問料事件」~最判昭和56年4月24日(民集35巻3号672頁)~菊田 雅裕 – 税務・会計のWeb情報誌『プロフェッションジャーナル(Profession Journal)』|[PROnet|プロネット]

 この判例では、以下の4つ全てが事業として成立するための要項となっています。

①自身の計算と危険において営まれているもの
②営利性と有償性を有しているもの
③反復継続して遂行されているもの
④社会通念上、事業として扱われているもの

  同人誌制作の場合は、このように変換できます。

①「○○印刷所に△△万円で発注すると1部あたり■■■円で売れれば大丈夫」と見通しを立てる
②■■■円で完売したから◎◎万円の利益が出た
③とらのあなやメロンブックスで委託販売する事や通販サイトで販売する
④一般的に、本を制作して売る事は立派な出版業

 ③以外は同人誌を作って売った時点で確実に該当してしまいます。
 つまり同人誌を作って売る事自体は問題ないが、通販や委託販売をすると副業として認定されてしまう確率が非常に高いです。

 今回処分されてしまった方は委託販売と通販の両方をやっていた為に言い逃れ出来ず、懲戒処分となってしまったと推察されます。

 原則、コミックマーケットや各種イベント等のいわゆる同人誌即売会のみの販売でないと言い逃れ出来ません。

通販で逃れる方法は無いの?

 これは法の穴を突く考え方で判例もありませんが、例えば通信販売サイトではなく会員登録制の「通信頒布サイト」を自分で作り、そこで頒布するならまだギリギリ言い逃れ出来た可能性があります。

 しかし、職場に「屁理屈こねるな!」と言われて押し切られる可能性があり、言い逃れを続ける事で今後の人間関係にも支障が出る可能性もあるため、公務員のサークル主さんはオンライン系に手を出すのは自重した方が良いでしょう。

そもそも頒布って?

 知りたい事は知れたと思うのでここから先はウンチクの話になります。
 結論だけ知りたかった方はお帰りになって頂いても結構ですが、気が向いたら他の記事も読んで頂けると私が喜びます。

 こちらの記事がおススメです。お時間が有れば是非どうぞ。

 話を戻します。
 そもそも、同人誌等の制作物を「販売」するという表現が間違っているのです。
 正しくは「頒布」です。

 販売とは「商品を売ること」
 頒布とは「広く分けて配り、行きわたらせること」

 この違いは凄く大事です。
 似ていますが、真鍮しんちゅうと黄金くらい違います。

 同人活動の建前は「同じ制作物を作る目的の下に集まったサークル内で、何らかの理由により制作に関われなかった人に、制作した人が有料で制作物を譲る」という事になっています。

 つまり「相手は不特定多数の他人ではなく、同じ目的の下に集まったサークルメンバーであり、身内同士での物のやり取りであるため様々な法律上問題ない」という事になっています。

 そこさえ守っていれば限りなく不特定多数に頒布したとしても言い訳が出来ます。
 ですのでサークルの案内に「おしながき」と表記したり「販売」という表現を使ってしまった時点で建前が崩壊するので、公務員のサークル主さんは特に注意しましょう。

 表現の自由は保障されていますが、万が一職業バレした時に身分に相応しくないような内容の同人誌等を制作していた場合は、信用失墜行為で処分される可能性が高い事は肝に銘じて下さい。

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