今回は、自衛隊の体力検定について解説します。
自衛隊に入ろうか悩んでいる方は是非参考にしてみてください。
自衛隊の体力検定は全部で3種類あり、陸上自衛隊はⅠ法と戦技、航空自衛隊と海上自衛隊はⅠ法とⅡ法を採用しています。
自衛隊には毎年体力検定があり、最低合格ラインの6級から最高評価の1級まで存在します。
また、陸曹を目指している方は最低でも3級くらいは取れないと合格枠を勝ち取る事は出来ないので、入隊前から体力をつけておいた方がライバルと差を付ける事が出来ます。
体力検定(Ⅰ法)【全自衛隊共通】
ジャージなどの運動着に着替え、実施者と補助者の二人一組で実施します。
やる順番は、腕立て伏せ→腹筋→3000m走です。
最低合格基準(6級)
一般的な自衛官の数値(3級)
自衛官の中でも特に優れているエリート(1級)
腕立て伏せ
腕立て伏せのポイントは下記の4つです。
1:掌をハの字にし、肩幅よりやや広げて地面につく
2:常に頭から踵まで一直線になるように姿勢を維持する
3:補助者が地面に手をつき、手の甲に実施者の顎が触れるまで腕を曲げる
4:手の甲に触れた後は腕が伸びきるまで身体を上げる
5:2分間で何回出来るかをカウントする
手の甲に顎が触れた後、腕を伸ばしきって1回です。
腕を伸ばしきらず、小刻みに手の甲に顎でタッチしてもカウントされません。
規定回数を超えられれば合格です。
途中でお尻を上げたり腰を反らして休憩は出来ますが、掌や足を地面から離したり、胸や腹、太もも、膝などを地面に付いたらその時点で終了です。(写真は休憩の姿勢の参考画像)
腹筋
腹筋のポイントは下記の4点です。
1:施者の足は肩幅まで開いても良い(ピッタリ閉じても良い)
2:補助者は実施者の足首を軽く押さえる
3:頭の後ろで手を重ね、肘を前に出す(指を組むのは×)
4:肩甲骨が地面に触れるくらいまで上体を倒し、肘が太ももや膝に触れるまで上体を起こす
5:2分間で何回出来るかをカウントする
写真のように二人一組になり、上半身を起こした時に肘が膝に触れたら1回です。
規定回数を超えられれば合格ですが、休憩は上半身を起こした状態でのみ許されているので、地面に寝た状態で上半身を起こせなくなったら時間が残っていても終了です。
3000m走
特に説明する事はありません。
3000mを規定時間以内に走る事が出来れば合格です。
他の2種目は正直なところナイショのゴニョゴニョがあるのですが、こればっかりはごまかしがきかないので落ちる人は落ちます。
アップや休憩を兼ねて、腕立て伏せ&腹筋が終わってから30分程度の時間を貰える事が多いです。
体力検定(戦技)【陸上自衛隊】
陸上自衛隊のみ体力検定Ⅱ法の代わりに導入された体力検定で、戦闘服装で実施します。
導入時に全国でデータを採ったのですが「頑張ると基準が上がってキツくなるから手を抜こう」というあまりにも酷い隊員が多かったらしく、落ちる方が難しい基準になってしまいました。
近々変更されるそうですが令和5年度は現状維持のようです。
戦闘服装
迷彩服、半長靴、執銃、銃剣、鉄八、防護マスク、サスペンダー、弾帯、水筒
弾嚢×4(大×2、小×2)、弾倉×6
Ⅰ法のように等級は無く、この検定に落ちる人はまずいませんが一応記載しておきます。
跳壕ちょうごう
助走無し、足を揃えた状態から1mジャンプするだけです。
フル装備なので多少重いですが、誰でも合格できます。
50m走
フル装備で銃を両手で持ったまま50mを12秒で走ります。
銃や装備が重いのでやや本気で走らないと落ちてしまいます。
重量物運搬
20ℓの水が入ったポリタンクなどを車両の荷台の高さから下ろし、持ったまま50m走り、同じ高さの荷台に載せるまでの時間を計測します。
荷台の高さがそこそこあるので、華奢な女性だとポリタンクを持ち上げるのに苦労します。
体力検定(Ⅱ法)【航空&海上自衛隊】
陸上自衛隊では平成28年度くらいから戦技に変更され、現在は行われていません。
しかし、航空&海上自衛隊では行われています。服装は体育服装です。
戦技が余りにもアレなので近々「Ⅱ法に戻るor新体力検定へ変更」という噂もあるようですが、まだ詳細は分かりません。
40歳未満までしかないのは、Ⅱ法は「40歳以上(女性は30歳以上)は省略する事が出来る」と定められているからです。受けても良いのですが受ける人は殆どいません。
最低合格基準(6級)
一般的な自衛官の数値(3級)
自衛官の中でも特に優れているエリート(1級)
懸垂
鉄棒にぶら下がり、反動無しで3秒に1回のペースで鉄棒の上に顎が出るまで上体を引き上げます。
女性は回数が多くなっていますが、斜懸垂で負荷が非常に軽いからです。
幅跳び
助走の距離は自由に決められますが、通常の走り幅跳びとやり方は同じです。
2回跳んで規定距離を超えられれば合格です。
ボール投げ
助走ありでソフトボールの遠投をします。
小さい頃にキャッチボールなどをしていないと落ちやすく、不合格者が多発する種目です。
どれだけ練習しても投げられない隊員もそれなりに見てきたので、将来自衛官になりたい人はキャッチボールの練習が必須です。
新体力検定(仮)
令和2年時点で体育学校で検証中の最新情報の為、回数などの詳細は分かりませんが以下の科目が戦技に代わり新しい体力検定の科目になりそうです。
懸垂
体力検定(Ⅱ法)の懸垂が復活するようです。
回数や年齢制限などが、以前のままなのかが気になります。
ジグザグダッシュ+水缶運び
現時点では詳細は不明です。
タイヤ曳ひき
乗用車サイズのタイヤにロープを通してたすき掛けをして走るようです。
昭和の香りがする科目ですね。
まとめ
自衛隊なので大変なイメージが有ると思いますが、合格するだけなら難しい事ではありません。
しかし、近年は特に低体力者の新隊員が目立ち不合格者が多い状況です。
陸曹になるための部内試験にも体力検定があり、結果が数値化されて優劣を付けられるため、上位の級を取らないと合格枠を勝ちとる事は出来ません。
また、自衛官は体力検定に合格しないと昇任できません。
年に1回の昇給も半額以下になるので、表に記載されている最低合格基準回数は定年まで超え続けなければなりません。
また、一部の技術職や事務職に就いている隊員は再任用制度という、給料が半額程度まで落ちる代わりに1年更新で最大65歳まで自衛隊に勤務し続けられる制度がありますが、体力検定に合格できなければ更新できないので辞めなければなりません。
部隊にもよりますが、若い隊員が最低合格基準で合格していると「あいつは妥協している…」等の評価を受けてしまうので、少し上の級を取っておいた方が人事的な評判は良くなります。
新隊員教育中に不合格になってしまうと評価が下がり、誰も希望しない不人気駐屯地に行かされる可能性が非常に高まります。
自衛官になりたい人は入隊前に最低ラインの回数は出来るようになっておいた方が良いでしょう。
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