【半忘備録】自衛隊の演習場訓練について

訓練風景 自衛隊

対空警報発令

 山では、日の出と共に敵の航空機が攻撃してくるのがお決まりで、航空機が近付いて来ると個人用防護衣を着用しタコツボに避難します。

 退避ごうの中でじっとしていれば良いので、これまで休む間もなく動き続けてきた隊員の休憩時間代わりになりますが、毒ガスがかれて除染作業が入ると化学防護衣を着て長時間作業をする隊員が出てしまいます。
(犠牲となった隊員に感謝しつつ休みますが)

 また、警報がかかると対空掩体えんたいに人員を出しますが、この時に役に立つのが荷物準備編でちょこっと書いた「パッタンコ」です。

 対空掩体えんたいは偽装を施すと偽装が邪魔で中にある重機関銃が撃てません。

 そのため普段はドーム状のおおいになっていて、射撃する時に固定を解除すると、即座に開くようになっている偽装資材がパッタンコです。

 正式な装備品では無いものの、全国の部隊にほぼ同じ物があり、大体パッタンコと呼ばれているそうです。最初にこれを発明した人は天才だと思います。

 左はパッタンコの内側、中央がパッタンコでおおっている状態、右が射撃可能な状態。

パッタンコ
引用元:左の写真は5旅団司令部HP、中央と右の写真は2師部付隊HPより

 話は戻りますが、おおよそ30分~1時間程度で航空攻撃の脅威は去るので、人員や施設に異常がないか確かめた後に防護衣を脱ぎます。

 この防護衣の生地がダウンのようになっているので、夏の暑い時期に厚着をすると頭が朦朧もうろうとする上、ここまで殆ど休み無しのため退避壕に隠れたまま寝てしまう隊員も少なくありません。

閑話

 空襲が終わり異常の有無を確認した頃にはすっかり明るくなっています。

 「夜は大丈夫と思っていても、明るくなって見直したら偽装が甘かった」なんて事はよくありますので、対空警報後にこれくらいまで手直しします。

7普連の公式Twitterをお借りしました。

 この偽装が完成した頃になると少し余裕が出てきて、隊員もやっと一息ついたり短時間の休憩が貰えたりします。
 ここで休憩を貰えた隊員が良く食べる物が「おやつラーメン」です。

 お湯は、眠気覚ましのためのインスタントコーヒー用にポットで保存しているものやストーブの上に置きっぱなしのヤカンのお湯を使用します。

 半分に割ってマグカップに入れるとジャストサイズなのでお椀が要らず、量も少ないのですぐに完食できます。

 普段ならジャンクフードの極みみたいな食べ物ですが、訓練中のおやつラーメンは名店の1杯に勝るとも劣らない味わいがあります。

閑話休題

状況の現示

 訓練では事前に示される「今練馬駐屯地にいる」「大宮から敵が攻めてくる」という設定は想定と言いますが、現地で示される「この車両は壊れました」「敵が攻めてきました」などの設定は状況と言います。

 例えば戦場でボーっと歩く人はまずいませんし、不審者が見えたら警戒するはずです。そういった設定を忠実に守り、戦場を意識した行動をする事を「状況に入っている」と言い、出来ていないと「状況に入れ!」と怒られます。

 いつ、どんな状況を出すかは統裁官次第なのですが、大体陣地の構築が終わった頃に敵が攻めてくる事が多いです。

 不審者が発見されたり、敵がいる設定の方向から銃声が聞こえたり、車両に「中破」と書かれた紙が貼られているのが見つかると、戦闘配備をしつつ展開地内の一斉検索を実施します。

 既に敵が内部に侵入している可能性があるので、この時はかなり細かい所までしらみ潰しに探します。

 状況は敵が攻めてくるだけでなく、機材の故障や毒ガスの散布、先述の航空攻撃など色々とあります。

陣地変換

 2夜3日ではほぼやりませんが、構築した陣地を撤収して次の場所に移動する事を、陣地変換と言います。

 陣地変換をするという事は、ここまでに書いた事を先発隊の出発から全てやり直すという事を意味します。

 陣地変換がある場合は事前の訓練日程で知らされますが、疲労が溜まった状態でその単語を聞くと本当に心が折れます。

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